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労働問題

労働問題

企業において避けることのできないのは労務に関する問題です。未払い残業代請求,セクシャルハラスメント(セクハラ)・パワーハラスメント(パワハラ),労働災害(労災民訴)などさまざまな紛争が発生します。また,問題社員への対応,出向・配転・転籍をめぐる問題,同一労働同一賃金(非正規雇用の従業員及び正社員間の待遇格差)などの日常的な労務問題への対応も必要です。当事務所は労働問題に関しても豊富な実務経験を有しています(講演などの実績もご参照ください)。お気軽にご相談ください。

 未払い残業代請求

労働紛争で最初に思いつくのが未払い残業代の請求ではないでしょうか。円満退社した従業員が突然内容証明郵便で未払い残業代を請求するようなこともあるようです。労働債権の消滅時効期間について,2020年4月より2年から3年に延長されています。従業員退職後の未払い残業代については14.6%という高い割合の遅延損害金が付されることも考えると,慎重な対応が求められます。まず,制度的な欠陥はすべての従業員に問題が波及することになりますので,絶対に問題のないようにしておくべきです。典型的には,残業手当と認められないような形式で固定残業代を支払っているような場合です。ご存じの方も多いでしょうが,いわゆる対価性要件及び明確区分性要件を満たさなければなりません(このほかに,「差額支払い合意」の要件が必要という考えたかもあります)。

また,労働者の労働時間管理が不明瞭でどこまでが残業に該当するのか分からないとか,不必要な手待時間が発生しているとかいうことのないように注意しましょう。実労働時間については,労働者の側が主張・立証しなければなりませんが,使用者としても労働者の労働時間を把握しておかなければなりませんので,使用者の側でも具体的な反論ないし反証が必要と言われています。場合によっては,明示的に残業を禁止することも必要でしょう。特に,テレワークでは,労働時間の管理が難しくなりますので,業務の報告や残業の申請などが適切になされるように制度設計する必要があると思います。

 ハラスメントに関する問題

ご存じのとおり,会社では,セクシャルハラスメント,マタニティハラスメント,パワーハラスメントといったハラスメントがあってはなりません。前二者については,従前より男女雇用機会均等法にて規制がされていましたが,パワーハラスメントについても,労働施策総合推進法が改正され,会社における必要な体制の整備などが義務づけられるようになりました(同法30条の2)。中小企業についても令和4年4月1日から体制整備等の義務化がされていますので,早急な対応が必要です。

この法律は,会社に対する直接的な民事上の損害賠償請求などを認めるものではありません。しかし,会社において適切な体制の整備などが行われていない場合には,パワーハラスメントなどの問題が起きたときに,安全配慮義務違反の一内容として,会社に対して損害賠償請求をすることも考えられるでしょう。会社としては,これまで以上に,体制の整備や職場環境の維持・向上に気を使わなければなりません。
また,何らかのハラスメントの申し出があった場合には,迅速かつ適切に調査・対応をする必要があります。ハラスメント被害者が声を挙げにくいことも注意が必要です。また,反面,加害者の懲戒処分をどの程度にすべきかという問題もあります。いずれにしても,事実の正確な把握が必要になります。

 労働災害など

従業員が業務遂行中に災害に巻き込まれることもあります。多くは労災として労働者災害補償保険法(労災保険)により対応されることになります。とはいえ,労災保険だけでは被害者の慰謝料などの損害がてん補されませんので,会社に対しての民事的な請求がされることがあります。保険などで対応されている会社も多いのではないかと思います。会社としても丁重な対応が求められるでしょう。また,うつ病などの精神疾患を発症したと主張されるケースでは,いろいろと評価が難しい場面もあります。事実関係をきっちりと調査することが必要になります。

 解雇・退職勧奨などの問題

問題のある従業員であっても簡単に解雇することはできません。解雇については,客観的に合理的な理由があり,かつ,解雇が社会通念上相当であると認められなければなりません。かなりハードルが高いとお考えください。万が一,解雇無効の訴えなどを起こされるようなことがあると,会社としても大きなリスクを負います。慎重に対応しなければなりません。

このような事情もあり,従業員に退職勧奨をして,退職を促す場合も多いと思います。退職を勧めること自体は構わないのですが,従業員が退職に応じないのに勧奨を繰り返すと,退職強要であるとして損害賠償を請求されるおそれもありますので注意しましょう。場合によっては,配置転換や出向などの対応を検討することも必要です。もちろん,これらの人事権の行使についても所定の要件をクリアしているか事前に確認すべきです。

なお,いわゆる雇止めについても解雇と同じような問題が生じることがあります。それまでの契約更新の回数や(従業員に明示した)更新に関する判断基準などから慎重に判断をしてください。また,雇止めの予告,(求められた場合の)理由の明示などの手続も適正に履践しましょう。

 同一労働・同一賃金など

いわゆる働き方改革関連法により多岐にわたる改正がされています。いわゆる残業代の上限規制や有給休暇の強制取得などが話題になりますが,もっとも対応に苦慮されるのはいわゆる同一労働・同一賃金に関する改正ではないでしょうか。パートタイマーや有期雇用契約者の労働条件を正社員のそれと均衡するようにしなければなりません。「均衡」というのはバランスをとるという意味をもちますが,その評価は難しいと思います。現時点では,職務内容などの労働条件設定にかかる諸要素の棚卸しをして,対象となりうる従業員と協議をするとともに,労働条件の相違を説明することができるように準備しておくことが必要でしょう。

 


 

このほかにも,会社の人事労務に関してはさまざまな紛争の形態・リスクが考えられます。対応が後手に回って紛争がもつれてしまうと解決が難しくなります。平時から紛争の芽をつむように対処するとともに,万が一,問題が発生した場合には,迅速に対応する必要があるでしょう。