SNSなどの過激投稿でお悩みの方も多いと思います。当事務所でもその種のご相談を多く受けます。
ツイッターなどの投稿の削除請求については,投稿の内容によってもそのハードルが異なってきます。近時の最高裁判決では逮捕歴のツイートの削除について争われました。削除を求めた男性は10年前の逮捕の記事を引用したツイートの削除を求めていました。ただ,ツイートの内容が公益的な内容をもつものなので,表現行為として簡単に削除を認めるべきではないという見解もあり,第一審と第二審で結論が分かれていました。最高裁判所は次のように述べてツイートの削除を認めました。
「本件事実の性質及び内容,本件各ツイートによって本件事実が伝達される範囲と上告人が被る具体的被害の程度,上告人の社会的地位や影響力,本件各ツイートの目的や意義,本件各ツイートがされた時の社会的状況とその後の変化など,上告人の本件事実を公表されない法的利益と本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,上告人の本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には,本件各ツイートの削除を求めることができるものと解するのが相当である。」(最判令和4年6月24日(令和2(受)1442号)裁判所ウェブサイト[投稿記事削除])。
①公表されない法的利益と②閲覧に供する理由とを天秤にかけるという判断はこれまでと特に変わりはないのですが,ここで注目すべきは,①>②であれば削除を認めると述べている点です。
逮捕歴などの削除に関してはこれまでも(別件で)争われていましたが,最高裁はGoogleの検索結果からの削除に関しては,①が②に明らかに優越することを求めていたからです。つまり,①>>②であることを求めていたわけです。
[削除請求が認められるのは]「上告人の本件事実を公表されない法的利益と本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に関する諸事情を比較衡量した結果,上告人の本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に限られる」(最決平成29年1月31日民集71巻1号63頁)。
このような違いが生じたのは,インターネットの検索結果の提供については,その情報流通基盤としての役割の大きさを考慮する必要があったからと考えられています。ツイッターに関しては情報流通基盤としての重要性はそこまで大きくはないという判断だったのかもしれません。とはいえ,判断が難しい問題とは思います。現に,今回の訴訟の第二審は前掲最判平成29年の基準を用いて,削除を認めませんでした。
プロバイダ責任制限法の改正も間近にせまっていますが,このような問題は裁判所の判断を仰がなければ分かってきません。事例の蓄積を待ちたいものです。