2022年12月6日、岡山経済同友会の企業法務会計研修会で「フリーランスの保護と新法制定の動向」という題してお話をさせていただきました。
近時は多様な働き方ができるようになり、フリーランスと称される働き方も増えています。令和4年6月の内閣官房「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」によれば、その数は462万人ともいわれています。
ただ、フリーランスは消費者ではありませんから消費者契約法などによる保護は受けられません。また、我が国では、労働者については労働法による保護を与えますが、フリーランスなどの非労働者には労働法を適用することはないとされています。したがいまして、フリーランスはどうしても弱い立場におかれ易くなります。
そこで、2021年3月には「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(以下、「ガイドライン」とします。)が作られました。このフリーランスは、取引に際しての契約書その他の書面の作成を促すとともに、独占禁止法及び下請法において問題となりうる行為を列記することで、フリーランスとの取引きの適正化をはかっています。また、ガイドラインは、フリーランスとして業務を行っていても、実質的に「雇用」に該当する場合には労働関係法令を適用するとも述べています。
ただ、ガイドラインは、現行法の適用関係を明確化したにとどまりますし、下請法では対応できない領域も多くあります。フリーランス増加とそれに伴うトラブルの頻発を受けて、フリーランス新法を制定することが予定されています。内閣官房より 「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」(以下、「方向性」とします。)が示され、パブリックコメントにも付されていますが、2022年12月6日現在では法案化には至っていません。
フリーランス新法がどのような内容になるのかは分かりませんし、現時点では本当に立法に至るのかも分かりません。ただ、現在のガイドラインを遵守するためにも、取引に際しての書面性の確保は重要でしょうし、そのような意識付けをしていく必要はあると思います。また、下請法に関する知見をもつことは、どちらの側からみても有益と考えます。
今後もフリーランス等の保護についての議論は続くと思います。ウーバーイーツユニオンのように法的紛争に発展するケースも多くなるのではないでしょうか(2022年10月25日に東京都労働委員会より救済命令がだされていますが、引き続き争われる見込み)。引き続き、フリーランスに関する動向に注視しつつ、適切な情報が提供できるように努力したいと思います。