事業活動において債権回収は避けて通ることのできない問題です。 債権回収に際してはどのような対応をとるべきかを素早く判断する必要があります。当事務所は,債権回収に関する豊富な経験を有しており,適切な方法をアドバイスさせていただくことができると考えています。また,代理人として迅速な債権回収に寄与することが可能です。
また,債権回収だけでなく日頃の債権の保全・管理についても危機時を見据えた検討をすることが必要です。契約書の内容をどのようにしておくべきか,担保権の設定についてどのように考えるべきかなど債権管理に関してもご相談いただければと思います。
なお,債権の回収・保全については,次のような点にご留意いただくとよいでしょう。参考にしていただければ幸いです。
1
事前に信用調査をしましょう
「取引先が破綻した。」「破産申し立てをするらしい。」このような状況になると債権の回収は難しくなってきます。「触らぬ神に祟りなし。」ではありませんが,まずは,問題のありそうな取引先とは取引をしないようにしたいものです。
ですから,事前に取引先の信用調査をしておくべきでしょう。直接的な方法としては,取引先の担当者・代表者と面談をする,事務所・店舗を訪問するといった方法が考えられます。近時は,ウェブサイトを作りこむことで信用のあるような雰囲気を醸し出すこともできます。フェイス・トゥ・フェイスでのやり取りはむしろ重要になっているのかもしれません。
もちろん,帝国データバンクなどの企業情報も確認はしたいところです。このほか,商業登記簿や不動産登記簿も確認したいところです。例えば,役員の解任・辞任があるような会社だと,何らかの内紛があるのではないかと疑われます。また,会社や代表者の所有する不動産の抵当権の設定状況をみることで,どのような金融機関とどの程度の取引があるのかも推察することができます。
2
契約書を作りましょう
取引先に問題がなさそうだと分かっても,口約束で取引を始めるのは危険です。どのような会社でも破綻等のリスクはあります。万が一の場合でも,有利に債権の回収ができるように,契約書を作成しておきましょう。
望ましくは,契約書をの記載を工夫して,相殺ができるようにしておくことです。いわゆる期限の利益喪失条項は必ず設けておきたいものです。これにより万が一の場合には,取引先に直ちに支払いを求めることができる状態になりますので,取引先に対する債務があれば,これらの債権・債務を相殺できる可能性がでてくるのです。相殺が認められた範囲で御社の債権の回収は成功したことになります。
問題は,取引先に対する債務をどのようにして作り出すのかです。もっとも簡単なのは取引先からも何らかの商品等を購入しておくことです。これが難しいようであれば,取引前に保証金を積んでおいてもらうことなどが考えられます。
3
可能であれば担保の設定を
事前に担保を提供してもらうことも有効です。前述の保証金は一種の担保になります。代表的な担保は,不動産への抵当権の設定や,保証などの人的担保の提供でしょう。このほかにも,債権譲渡担保や集合物譲渡担保の設定も考えられます。事業の内容などからどのような担保が有効なのか考えてみるとよいでしょう。
4
支払いが滞り始めたら…
取引先の支払いが遅れるようになったときには,注意が必要です。まずは,配達証明付内容証明郵便などで催告をした記録を残しておくべきでしょう。あるいは,この段階で,契約書を強制執行認諾文言付公正証書として作成しておくことも考えられます。この公正証書を作成しておけば,裁判をしなくても差し押さえをすることができるからです。また,今後の取引を継続したいのであれば,担保を差し入れるよう要求することも一案です。なお,担保の差し入れを想定しているのであれば,予め,支払いが滞ったときには担保を提供するといった条項を契約書に設けておくとよいでしょう(否認リスクを下げることになります)。
5
債務名義が必要です
どうしても支払いを確保することができない場合には,差し押さえなどの法的手続きをとらなければなりません。前述した,強制執行認諾文言付公正証書がないのであれば,確定判決などを確保しなければ差し押さえをすることはできません。
このために訴訟等を提起する必要があるのです。訴訟等に関しては,弁護士に依頼していただいたほうがよいでしょう。ただ,少額訴訟(60万円以下の金銭の請求を目的とする訴訟)のようなものであれば,比較的簡易な方法で債務名義を取得することができます。また,支払督促といって,さらに簡単に債務名義を得る方法もあります。なお,支払い督促については,相手方の対応によっては訴訟に移行する可能性があります。このときには管轄が被告の普通裁判籍になりますので,注意が必要です。
担保権の実行に関しても同様です。抵当権のような法定担保であれば,その実行は比較的容易ですが,譲渡担保のような法定外の担保については注意が必要です。その意味で,当初に述べた「相殺」が最も容易な債権回収方法といえます。取引先に対して内容証明郵便などで相殺の意思表示をすればよいだけだからです。
6
消滅時効が成立しないようにしてください
時効の管理についても少しふれておきます。債権の消滅時効を中断する方法には,いくつかありますが,相手方の債務承認を取り付けるのが最も確実です。相手方から債務承認書を取り付けるのがよいでしょう。債務承認書に公証役場で確定日付をもらっておくとさらに確実になります。また,少額でも構わないので弁済をしてもらうのもよいでしょう。債務承認が得られそうもないのであれば,上述した訴訟等の法的手続きを検討することになります。
なお,債権法の改正により,権利行使可能であることを知った時から5年を経過すると,消滅時効が成立することになります。事業者の場合には,商事消滅時効とほぼ同じですので,極端な違いはないことが多いかもしれませんが,今後は注意が必要です。