日本茶がGI登録される見込みとの報道がありました(食品新聞「日本茶、GI登録へ 日本茶業中央会が申請 背景に海外での宇治抹茶の商取引を阻む中国産「宇治抹茶」模倣品など」2026年5月11日、https://news.yahoo.co.jp/articles/6955cc6d90c64f4a7c99da1478820efea9ae6c7d、2026年5月15日最終閲覧)(正確には有識者の意見や第三者の意見も踏まえて、これから審査されることになります)。近時は海外での抹茶ブームなどもあり、日本茶の輸出拡大のために地理的表示(GI登録)を進めてブランドの確立を図るということになります。日本でのGI保護が認められれば、EUや英国で「日本茶(Japanese Tea)」の名称が保護されることになりますし、その他の国でも無断での商標登録を防ぐことにつながります。その一方で、日本茶という幅広い種類の茶を含む農林水産物等の名称については、「その地域ならでは」の産品という要素が薄くなってしまうことにも注意する必要があります。
我が国では「日本茶」に先立って「日本酒」も地理的表示としての保護されています(2015年)(なお、こちらは国税庁の酒類表示基準に基づくものですが、保護要件などに大きな違いはありません)。こちらもJapanese Sakeの海外展開を視野においたものでしょう。日本酒の生産値は日本国とされているのですが、あまりに広すぎる生産地を確定してしまうと自然環境の均一性が薄れていき、生産地と品質との相関関係の説明が難しくなるという指摘もあります(荒木雅也「地理的表示と日本の地域ブランドの将来」165-166頁(信山社,2023) )。
地理的表示保護法の対象となる「特定農林水産物等」については、①品質、社会的評価その他の確立した特性があり、②その特性が生産地に主として帰せられることが求められます。前出の報道によれば、日本茶には、煎茶・深蒸し煎茶・かぶせ茶・玉露・碾茶(抹茶)・玉緑茶・ほうじ茶・番茶・粉末茶などが含まれるようですが、これらの共通する特性となるとかなり曖昧になってしまいます。日本茶の登録申請については、既にその内容が公示されています(下記URL)。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/notice/pnApplication/0310_index.html
ここでは、日本茶の特性は、「日本茶は、日本産の茶葉を原料とし日本国内で加工した「茶」であり、需要者からは、まろやかな味わいとさわやかな渋み、豊かな香りや綺麗な水色(すいしょく)が高く評
価されている。」とされています。また、その特性を付与するための生産方法も、要するに、日本国内で栽培された生茶を原料とするというもののようです。また、輸入の茶葉をブレンドしても地理的表示保護法で登録される見込みの生産方法には該当するようです(詳しくは分かりませんので、誤解があればご容赦ください)。
何をもって「日本茶」というのかは、なかなかに難しい問題だと思います。「日本茶」の登録に関しては、おそらくはあまり異論はないように思います。日本茶の輸出にも寄与するものでしょう。ただ、より一般化していうと、地理的表示保護制度において、対象となる農林水産物等の特性を誰がどのように特定するのか、その特性がどの程度地域と結びついていればよいのかということについては、かなり難しい問題があるように思います(例えば、八丁味噌をめぐる紛争など)。地理的表示保護制度について、海外における日本ブランドの保護を主眼とするのか、地域の伝統的な手工業的生産品の保護・育成を主眼とするのかといった観点からみることも考えてみることも必要なのかもしれません。