2026年も半分が過ぎてしまいました。前半戦の反省を踏まえて、心機一転、後半戦に望まれている方もおられるでしょう。もしかしたら、新しく事業を始めたという方もいらっしゃるかもしれません。事業をするにあたっては、その自己を表示するための名称、すなわち、商号を考えなければなりません。会社については、会社の名称が商号になります。新たに商号を選ぶにあたってはどのような点に注意したらよいでしょうか(なお、商号を変更する場面でも同じことがいえます)。
(1) 原則として、商号の選定は自由です。ですから、自分たちの好きな名前をつけて構わないのです。場合によっては、他人の商号と同じになってもかまいません(ただし、後述するような問題は理解しておいてください)。ただし、商業登記との関係で他人の商号と同一の商号を同一の本店所在地に登記することはできません。
(2) とはいえ、例えば、他人の有名な商号を無断で使用すると問題がありそうだということは何となくわかると思います。商号の使用が不正競争行為になる場合には、その商号の使用が禁止されたうえ、損害賠償の請求を受けたりするおそれがあります。不正競争防止法では、需要者の間に広く認識されている(周知性のある)他人の商号と同一・類似の商号を使用し、他人の営業と混同を生じさせる行為が不正競争行為とされています。意訳すると、他人の商号が広く知られていて、需要者がその他人の事業であると勘違いしてしまうような商号を使用してはいけないといったところでしょうか。ちなみに、他人の商号が登記されている必要はありません。逆に言えば、商号検索などをして、自分の使いたい商号が他人の商号と似たような商号だったとしても、営業場所が地理的に遠く離れていて需要者が勘違いをおこすようなおそれがなければよいということになります。
また、不正競争行為防止法では、著名な商号も保護されます。著名というのは、周知というレベルよりもさらに広く知られている状態と理解していただいて構いません。この場合、その商号の識別力が極めて強いため、営業の混同(勘違い)を生じさせるか否かを問わず不正競争となるのです。とはいえ、「著名な」商号ですので、少し注意を払えば衝突を回避できると思います。
(3) もう一つ、商法及び会社法では、商号の不正目的による使用を禁止する決まりがあります。すなわち、「何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。」と定められています。この規定に違反した場合にも、差止請求や損害賠償請求を受けるおそれがあります。
不正競争防止法との違いは、①周知性や著名性の要件がないこと、②その代わり、不正の目的が求められることです。ここでの「不正の目的」とどのようなものでしょうか。裁判例では、「他の会社の営業と誤認させる目的、他の会社と不正に競争する目的、他の会社を害する目的など、特定の目的のみに限定されるものではないが、不正な活動を行う積極的な意思を有することを要する」したものがあります(知財高判平成19・6・13判時2036号117頁)。この事例に従えば、積極的な不正の意思のようなものが必要ということになりますので、普通に商号を選ぶ分には問題なさそうです。
もっとも、学説では、不正競争防止法が不正競争の目的という主観的な要件を不要にしていることとのバランスから、ここでの不正の目的を不正な活動を行う積極的な意思に限定して解釈すべきではないという考え方もあるようです。このような見解に立つと、積極的な意思までなくても、他の会社の営業と誤認するという認識があれば足りると考えることになります(青竹正一 著『法律学講座 商法総則・商行為法(第5版)』(信山社、2025年)82頁)。慎重に考えると、上のような見解も踏まえて、他の会社などと勘違いされるような商号は使用しない方がよいということになりそうです。
(4) 商号の選定は自由に行っていただいて構わないのですが、ここに説明したような法律を知っていただいて、紛争を招くことのないようにしてください。