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遺言書作成

遺言書作成

自身の死後のことを心配する方も多いと思います。どんなに仲が良くても兄弟間で遺産を巡ってトラぷるになってしまうこともあります。それを抑止する一つの方法として遺言書の作成が挙げられます。当事務所では,予め遺言を作成しておくことをおすすめしています。遺言を作成しておくことで,自分の意思に沿った遺産分割をすすめることができるようになります。
また,相続に事業の承継がかかわるような場合には,遺言書を作成するだけでなく,税務上の問題も含めての慎重かつ総合的な対応が必要です。当事務所では,所属弁護士の知識・経験を活かしての総合的な事業承継問題への対応にも力を入れています。

 

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遺言制度

 遺言という言葉を知らない人はほとんどいないと思います。その一方で,具体的なことはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。以下では,遺言に関しての基礎的な説明をしておきます。遺言を作成するメリットなどもご理解いただけるものと思います。
先ほど述べたとおり,遺言書を作成することで,ご自身がお亡くなりになられた後で,その人の意図した効果を発生させることができます。その人の最終意思を尊重する制度などと言われます。
最終意思の尊重は,遺言が法定相続制度に優先するという点に顕著に表れます。例えば,法定相続分にかかわらず,会社の株式を後継者に集中させることができるわけです(ただし,遺留分減殺額請求を考慮しておく必要はあります)。
もっとも,そのような効力が発生するのは,遺言者がお亡くなりになった後のことになります。このときには,遺言を残した人の真意を確認することはできません。そのため,遺言者の意思が明確に確保されるように,遺言の成立要件はかなり厳格に定められています。例えば,せっかく遺言書を作成しても,日付が抜けていると無効になってしまいます。慎重に作成をすすめる必要があります。

 

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遺言の種類

 遺言にはいくつかの種類があります。さきほど説明した遺言の成立要件が異なってきます。遺言の内容や遺言時の状況などに応じて適切な方式を選択することになります。遺言には,普通方式の遺言と,特別方式の遺言とがあります。普通方式の遺言は3種類,特別方式の遺言は4種類あります。主に利用されているのは,普通方式の遺言のうちの,自筆証書遺言と公正証書遺言です。実務的には,これらのいずれかを利用していることが多いと思いますので,こちらについて簡単に説明します。

自筆証書遺言

 自筆証書遺言は,遺言者が遺言書の全文日付及び氏名を全て手書きで書き,押印して作成する方式の遺言です。なお,平成31年1月13日から方式要件が緩和されて,自筆証書遺言に添付する財産目録については,自署でなくてもよいことになりました(ただし,財産目録の各頁に署名押印する必要があります)1)

公正証書遺言

 公正証書遺言は,遺言者が遺言の内容を公証人に伝えて,公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成するというものです。なお,証人2人の立ち合いが必要です。

メリット・デメリット

 これらの遺言方式の有利不利を考えていずれの方式で遺言書を作成するのかを考えることになります。自筆証書遺言は,いつどこで作成しても構いませんし,遺言書作成の費用もかからないので比較的気軽に作成することができます。
その反面,自筆証書遺言では,方式不備であるとして無効とされる危険性があります。また,遺言書の保管状況によっては,遺言が都合よく偽造・変造されたり,破棄されたりするおそれもあります。なお,令和2年7月10日から「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行されていますので2),法務局に遺言書を預けることにより,遺言書の偽造,変造,破棄,隠匿といった危険を回避することも考えられます。
公正証書遺言は,その反対で,専門家である公証人が関与するので,方式不備などの問題は生じませんし,公証役場に保管されるので偽造変造のリスクもありません。他方で,公証人と連絡をとって遺言書を作成しなければなりませんし,遺言書作成の費用もかかるので,少しハードルが高くなります。

いずれにしても,ご自身がどのような財産をもっているのか,それをどのように相続させたいのかを考えるようにしましょう。相続税の納税義務が発生するおそれがあれば,そのことも考えて納税資金を準備しておく必要があるかもしれません。ただ,遺言は新しい遺言書を作ることで,簡単に言えば,「書き直し」ができます。完全なものを作成しようとまでは考えないほうがよいと思います。遺言の方式や遺留分への対応などは弁護士と相談をしながら,作成していくこともできます。

 

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遺言能力

 ところで,遺言を作成するに際してもう一つ大事なことがあります。それが遺言能力です。遺言をするための能力などと定義されます。遺言をするときにこの能力がないと,遺言は無効とされてしまいます。要するに,認知症がすすんだ段階で遺言をすると,遺言能力がないとして,遺言無効とされるリスクがあるのです。
問題は,どの程度の能力があればよいのかということですが,いろいろな議論がありはっきりとしたことをお伝えすることはできません。遺言の内容の難易度との兼ね合いもあると言われています(遺言の内容が難しければ,それだけ高い理解力が必要になると考えられます)。
自筆証書遺言の場合には後日の紛争を招きかねないので,遺言能力に疑義が生じることのない時期に,言うなれば,なるべく早い時期に遺言をしておくのがよいでしょう。なお,公正証書遺言の作成時には公証人が遺言能力を確認します。そのため,自筆証書遺言の場合よりも遺言能力が否定されることは少ないはずです。とはいえ,公正証書遺言であっても遺言無効とされた判決はありますので,注意が必要です。やはり,後日に疑義を残すようなことのない段階で遺言書を作成しておきたいものです。

 

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遺言に関する法改正

 ところで,先ほど少しふれましたが,自筆証書遺言に関してはさまざまな法改正があります。まず,平成31年1月13日から財産目録をワープロで作成することができるようになりました1)。ワープロ打ちだけでなく,登記事項証明書や預貯金通帳のコピーを目録とすることもできるようです。細かい財産目録までは自分で書けないという高齢者の方も,今後はこの方法で遺言を作成することができるようになります。
それから,令和2年7月10日からは,自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)で保管してもらうことができるようになりました2)。遺言者は自ら法務局に赴いて遺言書の保管を申請しなければなりませんが,誰かが遺言を破棄したり,加筆したりする危険がなくなります。また,相続人は,(遺言者がお亡くなりになった後ですが)ご自身にかかわる遺言の有無を調べてもらうこともできるようになります2)(公正証書遺言ではいわゆる遺言検索をすることができたのですが,それと同じようなことができることになるようです)。さらに,法務局(遺言書保管所)に保管されている遺言書については,遺言書の検認を受ける必要もありません2)
このように,自筆証書遺言についてはより使いやすいように法律が改正されています。今後は,これらの制度をうまく活用していくが求められるでしょう。

法改正に関しては法務省のウェブサイトをご参照ください。
1. 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
2. 法務局における遺言書の保管等に関する法律について