下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」とします。)が、2025年3月11日に閣議決定されました。改正下請法は今国会での成立を目指して審議されれます。今回の改正は、昨今の経済情勢に対応するため、大きな改正になることが見込まれます。
主な改正ポイント
【適正な価格転嫁の促進】
- これまでも買いたたき規制により協議等を促していましたが、より明示的に発注者による一方的な代金決定が禁止されるようです。これまで、著しく低い下請代金を不当に定めることが親事業者の禁止事項であるところ(現行4条1項5号・いわゆる買いたたきの禁止)、「不当に定める」の内容として運用基準では下のように定めていました。ただ、同号の規定は金額自体の高低を問題としているように読み取れますので、新たに協議プロセスに着目した規定を設けて(改正案5条2項4号)、価格転嫁を促すことにしたものと思われます。なお、買いたたきの規制はそのまま残っています。
- 下請法運用基準第4・5(2)
- ウ 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく,従来どおりに取引価格を据え置くこと。
- エ 労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストが上昇したため、下請事業者が取引価格の引上げを求めたにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面、電子メール等で下請事業者に回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くこと。
【手形払いの禁止】
- 手形のサイトが短くなるように指導基準が変更されていましたが、今般、下請代金の支払いにおいて、手形払いが禁止されることになるようです(改正案5条1項2号かっこ書)。また、改正案をみると、割引困難手形の交付に関する現行4条2項2号も削除されるようです。ただ、ファクタリングなどの一括決済方式が禁止されるわけではないと思います。
- 【運送委託の対象取引追加】
- 運送委託も下請法の対象取引に追加されます(改正案2条5項)。これまでも運送事業者は役務提供委託として保護されないわけではなかったのですが、いわゆる自家利用役務に該当してしまうと保護を受けることができませんでした。簡単に言うと、これまでの下請法の役務提供委託は、例えば、運送業者が顧客からの依頼を受けた運送業務の一部を別の運送業者に委託するような場合(つまり、自家利用ではない場合)でなければ対象にならなかったのです。今回の改正は物流問題への対応として、広く運送業務を対象にできるようにする狙いと思われます。
- 【従業員数による基準の新設】
- これまでは資本金基準だけでしたが、従業員数による新たな基準が設けられます。資本金基準ですと資本金1,000万円の事業者から個人事業主に委託をしても下請法の対象にはならないなどの問題がありました。そもそも、資本金だけで企業の大小をはかることはできませんので、従業員なども基準として導入したということでしょう。
- 【「下請」用語の見直し】
- 「下請」という用語が見直される予定です。「下請」という用語自体が中小零細事業者の自立を妨げているという認識があるようです。そこで、「下請事業者」を「中小受託事業者」、「親事業者」を「委託事業者」等に改めるとされています。下請法という呼び方も変わっていくことでしょう。
【今後の対応など】
今回の改正で注目されるのは適正な価格転嫁の促進が重視されているようにみられることです。昨今の原材料価格やエネルギーコストの高騰は、中小事業者の経営を圧迫しており、その状況を改善するための措置と言えるでしょう。下請法の人的な対象が広がることも踏まえて、第三者に業務を委託する際には、その対価などについて、適切な協議を経て決定していく必要があるでしょう。特に、過去の委託料などを安易に据え置きにすると、今般の改正から指導などの対象となるリスクもあります。適切に交渉をして議事録なども残しておく必要があると思われます。
なお、いわゆるフリーランス法でも買いたたきの規制があります(フリーランス法5条1項4号)。従いまして、フリーランスに委託をする場合も同様の注意は必要でしょう。フリーランス法については、横並びの改正にはなっていないようですが、趣旨としては同じことでしょう。
また、下請事業者においては、改正法を利用して、価格転嫁の交渉などを積極的に進めていくことができるはずです。価格転嫁については中小企業庁のウェブサイトにもよく記載されていますので、参考にしてみてください(https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/shien_tool.html)。
当事務所では、下請法に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。