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公益通報者保護法の改正

先の通常国会で公益通報者保護法が改正されました。

今般の改正は、公益通報を阻害する要因を解消し、従業員等からの通報を促すことにあるようです。

まず、事業者は公益通報を妨げる行為をすることを禁止されます。要するに口封じなどをしてはいけませんよ、ということでしょう。そのほか、正当な理由なく公益通報者を特定する行為も禁止されます。犯人捜しではありませんが、通報者探しをしてはいけない、ということです。

そのほかにも、いくつか改正点はあるのですが、注目すべきは、通報後1年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由としてされたものと推定するというものでしょう。例えば、通報後1年以内に当該従業員を解雇したときには、事業者側が通報を理由とする解雇ではないことを証明しなければなりません。これが証明できなければ、解雇無効とされてしまいます。

懲戒はともかくとして、現状の解雇規制からすると、解雇については、合理性と相当性を事業者側で証明しなければならないので、あまり大きなインパクトはないかもしれません。解雇の合理性の主張に、公益通報を理由とするものではないことも含まれてくるように思います。

このように、「不利益取扱い」全般について、通報によるものと推定されるわけではないようです。ただ、マタニティハラスメントに関する最判平成26年10月23日は、「均等法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解される」としたうえで、事業主に対して、労働者の真意に基づく降格に対する承諾であることか、法が女性労働者の不利益取扱いを禁止した趣旨・目的に反しない特段の事情の立証を求めています。当然、法律も違いますので、同じように解釈されるとは限りませんが、公益通報者の保護は重要な公益の確保に結びつきます。公益通報を理由として不利益な取扱いをすることが許されないことは当然ですが、そうでなくても、そのような疑いをもたれることのないよう、不利益な取扱いなどをするときには、合理性・透明性が確保されるよう努めるべきでしょう。

なお、改正法の施行は公布の日(令和7年6月11日)から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日とのことです。

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