事業承継や会社のお家騒動で自社の株式を譲渡するケースがみられます。
多くの中小企業の株式には「譲渡制限」付されているので、譲渡について取締役会ないしは株主総会(取締役会が設置されていない会社の場合)の承認決議が必要です。ここでは、株主総会を開催する場合について、コメントします。
株主総会を開催するといっても「親が高齢で、株主総会の会場まで行くのが大変…」とか、「遠方に住んでいる親戚に来てもらうのも…」とかいったお悩みもあります。このような場合に、委任状を取り付けてもよいのですが、「ハイブリッド(出席型)株主総会」を開催するのも一案です。
物理的な会場だけでなく、オンラインでも正式に株主総会へ「出席」できる仕組みです。この方法を使えば、ご自宅のパソコンやタブレットから身体的な負担なく総会に参加し、議決権を行使できます。
この方法で株主総会を開いた場合、議事録の書き方に一つだけ注意点があります。それは、オンラインで出席した取締役等又は株主の出席方法を記載することです(会社法施行規則72条3項1号)。
▼記載例
「株主のうち〇名(議決権〇個)は、ウェブ会議システムを利用する方法により本株主総会に出席した。」
ハイブリッド型株主総会は、特に定款などを変更しなくてもできますので、お試しいただければと思います。なお、開催場所を定めない完全オンラインの株主総会(バーチャルオンリー株主総会)は、非上場会社では開催できませんので、ご注意ください。また、ここでは詳細には説明できませんが、株式を譲渡する株主は特別利害関係人に該当するという見解がありますので、決議内容が著しく不当とされた場合には、株主総会決議取消のリスクがあることも抑えておくべきでしょう。
参考資料等
経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」経済産業省(https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/shin_sokai_process/pdf/008_s01_00.pdf,2025年7月16日最終閲覧)。
神﨑満治郎ほか『会社法務書式集〈第3版〉』174-176頁(中央経済社,2023年)。
R&G横浜法律事務所編『戦略的株式活用の手法と実践』221-222頁(民事法研究会,2019年)。