この時期、屋外でイベントなどを開催することも多いと思います。主催者側としては、イベントの盛り上がりを伝えるためにイベントの様子を写真や動画で配信することがあります。この際に来場者が写り込んでしまうことがよくあります。
このような場合に問題になるのが肖像権です。もっとも、肖像権については法律による明確な定めがあるわけではありません。伝統的には、肖像権は、「自己の肖像を、他人が権限なくして絵画、彫刻、写真その他の方法により作成・公表することを禁止できる権利」とされていたようですが、近時はプライバシーの権利の一種ととする見解も有力ということです(*1)。
このように「肖像権」といっても、その内容がはっきりしていませんので、どのような写真や動画が肖像権の侵害になるのかもよくは分かりません。
そこで、肖像権侵害を回避するために、①イベント主催者としては、イベント会場内における動画・写真の撮影などについて、来場者から同意を取っておくことが考えられます。チケットなどの約款に規定しておくのもよいでしょう。
もっとも、不特定多数の人が来場するようなイベントでは、このような方法もとりにくいところです。このような場合には、②「イベント会場内で、撮影や撮影データの利用等についてアナウンスしたりその旨を記載した掲示物を来場者の目に届く形で設置するなどして、注意喚起を認識したにもかかわらず、それでもイベント会場にとどまったことを以て、同意があったと」することもあるようです(*2)。
もちろん、③来場者が特定できないような方法で撮影・掲載等をすることも考えるべきでしょう。イベントの内容によっては、これでも十分に臨場感のある写真や動画を掲載できるでしょう。イベントの内容、広告の目的、リスクの大きさなどから適切な方法を選んでいくべきと思います。
*1: 斉藤邦史『プライバシーと氏名・肖像の法的保護』149頁(日本評論社、2023年)。
*2: 鈴木悠介「広報と法務 第6回 広報・PR領域に潜む法的リスクコンプライアンス・リスク(3)― 製品・サービスPR、イベント開催等にまつわるリスク」ジュリスト1611号98頁、103頁(2025)。