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ステマ規制と口コミ投稿

ステルスマーケティング(以下、「ステマ」とします。)が規制されるようになって、しばらく経ちますが、少しずつ措置命令などを受けた事案がでてきているようです。こちらのウェブサイト(LEGALX「【ステマ規制】令和6年度ステマ措置命令まとめーQ&Aに基づく実務ポイントつき」2025(https://legalx.co.jp/knowledge/stealth-marketing-case-2024,2025年9月12日最終閲覧))によりますと、令和6年において6件の措置命令が出されているようです。

 

ステマは、「なりすまし型」と「利益提供秘匿型」に分類されるといいますが、インフルエンサーなどに利益提供をしていたのに、その事実を秘匿する「利益提供秘匿型」と呼ばれる類型が措置命令の対象とされているようです。インフルエンサーに関する事案が多いようですが、消費者に利益を提供してグーグルマップに高評価をつけさせるといった例もあります。

 

偶然かもしれませんが、上のウェブページで紹介されている2件のグーグルマップ投稿事例は、いずれも医療関係です。ステルスマーケティング告示に基づいて初めて行われた措置命令が医療法人社団祐真会事件(消費者庁令和6年6月6日措置命令)で、高評価投稿を条件にインフルエンザワクチンの接種費用を割り引いていました。もう一件のスマイルスクエアの事案も同様に、高評価を条件に歯列矯正を割り引くものです。いずれも自由診療を対象としているところが興味深いところです。

 

「自由診療に属するサービスの割引は、通常、割引を想定しない診療サービスの支払いに慣れている来院者にとって、来院者が割引を受け入れるか否かの意思決定に与える影響が大きいもの」であり、「このような広告手法が放置され、他の医療機関が同様な手法を採用するならば、医療サービスの質の評価が過大となり、医療機関の選択に影響を与え、ひいては、健康に直接影響を与える医療サービスにおける公正な競争が阻害されるおそれがある」と指摘されています(医療法人社団祐真会事件について、佐藤吾郎「判批」ジュリスト1606号(2024年)102頁)。

 

このような評価はもっともなものと思われますが、高評価・低評価にかかわらず、口コミ投稿を行ったら割引価格で商品等を提供する場合はどうでしょうか? 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A Q6では、口コミ内容についての事業者の指示は含まれていないので、事業者は表示内容の決定に関与していない、つまり、ステマには該当しないとされています。少し微妙に思われるるかもしれませんが、消費者庁の見解としては、許容される表示とされていることは覚えておいてよいかもしれません。

 

もっとも、プラットフォーマー側のポリシーとして、このような投稿が禁止されている場合もありますので、注意が必要です。例えば、グーグルマップのポリシーでは、「レビューの投稿や否定的なレビューの修正または削除と引き換えに、インセンティブ(金銭的報酬、割引、無料の商品やサービスなど)を提供する行為。」は虚偽のエンゲージメントとして、事業者の禁止行為とされています(グーグルマップポリシーヘルプページ参照)。

 

現に、有名な話ですが、イマーシブ・フォート東京は、2024年3月にグーグルマップの口コミ依頼に応じることを条件にクーポンを提供して、グーグルのポリシー違反と指摘されたようです(なお、X投稿はこちら ⇒ https://x.com/Immersive_Fort/status/1765890176356659698)。消費者庁としてはステマ告示との関係では許容されるとみているようですが、プラットフォーマーのポリシー・規約なども含めて事前に慎重に検討しなければならないマーケティング手法といえるでしょう。

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