最近は誰もがスマートフォンで風景写真を撮影することができるようになりました。
この種の写真にも著作権は発生するのでしょうか。また、同じような写真を撮影した人がいたら、著作権侵害といえるのでしょうか。
細かいことはともかく、スマートフォンで撮影したようなものでも、被写体の選択、構図・カメラアングル、シャッターチャンスの捕捉、被写体と光線との関係などを工夫することはできるので、創作性が認められる傾向にあります。つまり、著作物として認められることが多いようです(とはいえ、平面の絵画を正面から撮影したような写真は創作性がないと判断されるようです)。
著作物として認められる写真であれば、それをそのままコピーすると著作権侵害になります。商品の紹介写真をそのままコピーしてホームページに掲載した事案について、裁判所は「著作物性を肯定し得る限界事例に近い」としながらも、複製権侵害(著作権侵害)を肯定しています(知財高判平成18年3月29日(平成17年(ネ)第10094号))。
では、同じような写真を他の人が撮影したらどうなるでしょうか。ここで取り上げた風景写真のようなものだと被写体は既に存在しているので、撮影手法についてのみ創作性が認められることになります。そうすると、創作性が低いものとならざるを得ず、その写真との類似性が否定される傾向にあります。要するに、著作権侵害と認められないことが多いのです。「既存の建物を被写体とした風景写真について、これを別人が撮影しても類似性が肯定される場合があり得るかどうか検討の余地があろう」とまで言われています(上野達弘=前田哲男『〈ケース研究〉著作物の類似性判断 ビジュアルアート編』228頁(勁草書房、2021年)。
このようにスマートフォンなどで撮影した風景写真は、そのままコピーしたような場合でなければ、通常は著作権侵害とならないと考えてよいでしょう。なお、この撮影スポットは自分が発見したのだというようなことを言われることもありますが、どのような被写体を選ぶのかはアイデアの問題であって、著作権では保護されないことにも注意すべきでしょう(知財高判平成23年5月10日判タ1372号222頁〔廃墟写真事件:控訴審〕)。