事業を展開するにあたっては商標登録をしておくべきです。
商標にはいろいろなものがありますが、立体的形状についても登録の対象となります。不二家のペコちゃんや、ケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダース人形などが有名です。最近では明治のきのこの山の登録が認められて話題になりました。
ただ、このような立体的形状の商標登録は慎重に行われています。ほとんどの出願は、その商品の形状(包装の形状)を普通に用いられる方法で表示するものとして、商標法3条1項3号に該当するとされています(金井重彦ら編『商標法コンメンタール〔新版〕』58頁[宮脇正晴](勁草書房、2022年))(なお、立会的形状に文字やマークはついていないものとします)。つまり、商品の形状だと認識できてしまうようなものは、識別力がないとして(あるいは独占に相応しくないとして)商標登録を認めないのです。
もっとも、これには例外があり、その立体的形状を継続的に使用することにより、その事業者の商品であると識別できるようになっていれば、商標法3条2項により登録が認められます。最近であれば、シン・ゴジラの立体商標がこれにより登録を認められています(知財高判令和6年10月30日(令和6年(行ケ)第10047号)裁判所Web)。
少し話が戻りますが、先ほどの商標法3条1項3号は審査実務では次のような判断基準によるとされています。
①商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる立体的形状、又は
②需要者において、機能又は美感上の理由による形状の変更又は装飾等と予測し得る範囲の立体的形状は、
特段の事情のない限り、商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断される(特許庁編・商標審査基準第1の五)。
需要者の予測範囲に入るものは商品そのものの形状と判断するということですから、かなり厳しいのだと思います。さらに、裁判例では、これに加えて、③需要者において予測し得ないような斬新な形状であるが、専ら商品等の機能向上の観点から選択された形状についても3号に該当するという判断を示したものもあるようです(宮脇・前掲コンメンタール59頁)。需要者が予測できないような形状でも機能的な観点から選択された形状であれば、同号に該当するというのですから、さらに厳しい基準ということになります(もっとも、この③に該当するとされた例はないようです)。
この③の類型に言及する裁判例はしばらくみられなかったようですが、近時、同じような判断基準を示すものが現れました(知財高判令和6年1月30日(令和5年(行ケ)第10076号)裁判所Web)。今後に同じような傾向が続くのかは注目が必要です。このように、商品の立体的形状については、ほとんどのものが商標法3条1項3号に該当するとされ、例外的に、長期間の使用により識別力が認められれば登録が認められる実務にあります。ただ、アメリカやヨーロッパでは必ずしもそうではないようです。立体的形状の保護のあり方については、さらに検討が必要という指摘もあります(渕麻依子「判批」L&T109号66頁(2025))。