先日、岡山県経済同友会の企業価値担保権に関するご講演を聞いてきました。
「企業価値担保権」の創設などを含む「事業性融資の推進等に関する法律」は、令和8年5月25日から施行されることになっています。これまでの融資は土地や建物といった「有形資産」を担保とすることにより行われていました。また、融資の際に経営者が保証人になることが通例といってよい状況でした。「企業価値担保権」制度は、事業がもつ「ノウハウ、顧客基盤等の無形資産」を含む事業全体の価値を一体として担保にするものです。それにより、土地などの物理的な資産に乏しいスタートアップ、サービス業、IT関連企業などでも成長資金の融資を受けることができるように思います。また、企業価値担保権を利用する場合には、原則として、経営者を保証人とすることは禁止されるということです。事業が生み出す将来のキャッシュフローや成長ポテンシャルを引き当てとする、これまでとは全く異なるアプローチなのだと思いました。
その一方で、実際に企業価値担保権の利用には相応のハードルがあるようにも感じました。地域の中小企業などでは将来キャッシュフローを適切に見積もるのは難しいでしょうし、それを評価する金融機関の力量もかなりのものが求められます。なお、企業価値担保制度において担保権者となり得るのは、制度の適切な運用を確保するため、新たに免許を受ける「企業価値担保権信託会社」に限定されるということです。
「企業価値担保権」制度は、日本の融資慣行を不動産担保や個人保証への過度な依存から脱却させ、企業の「将来性」に着目した未来志向の融資を導く可能性のあるものでしょう。どのような融資例がでてくるのか、地域のスタートアップなどの利用状況などにも着目して制度の運用を見守りたいところです。