お米の価格が高止まりしています。令和7年の作況から値下がりに転ずるのではないかとの報道もありますが、今のところ(2025年12月6日)、そのような気配は感じられません。そんな中で、ベトナムから密輸したお米を国産と偽って小売業者などに販売して書類送検されたというニュースがありました(日本経済新聞ウェブ版「外国産米を国産と偽り販売、容疑の2人書類送検 1.3億円売り上げか」2025年12月1日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF0127O0R01C25A2000000/,2025年12月6日最終閲覧)。
報道によれば、関税法、米トレーサビリティ法、詐欺などの容疑がかけられているとのことです。詳しいことは分かりませんが、虚偽申告による輸入などで関税法違反(同法111条)、それを国産と偽って高額で販売したことで詐欺罪(刑法246条)、産地情報などの取引記録の作成や伝達をしなかったということで米トレーサビリティ法違反(12条1号、2号)といったところではないかと思います。
原産地の偽装は昔から問題になっていたことで、食品表示法でも積極的な表示義務が課されています(食品表示法4条1項、内閣府令(食品表示基準3条2項、18条1項))。また、景品表示法第5条第3号に基づく告示「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年公正取引委員会告示第34号)でも、原産地の判別が困難な表示は禁止されています。
このように直接的な表示のほかに、品質が問題になる場合もあります。品質の劣る「外国産」の商品を品質の優良な「日本産」であるかのように表示すると優良誤認表示(景品表示法5条1号)になり得る わけです(なお、景品表示法はBtoCの取引が対象になりますので、今回の偽装への適用は難しいでしょう)。また、不正競争防止法でも、品質を誤認させるような表示をしたり、そのような表示をした商品を販売等することは不正競争行為に該当するとされます(不正競争防止法2条1項20号)。
とはいえ、原産地偽装が常に景品表示法や不正競争防止法の問題になるかというと、なかなか難しいように思います。原産地を偽ることが品質を偽ることになるとは限らないからです。特に食品などでは個々人の嗜好が問題になりますので、ベトナム米やカリフォルニア米が日本米より劣るとは言い切れないのではないでしょうか。もちろん、糖度などの客観的な指標があれば参考にすることはできるでしょうが、それでも、好みというものはあるものです。それに、日本製が高品質という時代も終わりつつあるように思います。
この関係で難しいのが原産地がブランド化している場合です。ブランドが品質を保証しているとみれば、品質を偽るものといえるでしょう。ただ、価値が多様化しているなかで、ブランドの保証する対象も多様化しているように思います。ブランドには、大切にしている価値や物語を共有するという機能もあるはずです。そのようなものまで含めて「品質」と考えることができるのかという問いがあるように感じます。