NEWSお知らせ

リバースエンジニアリングの禁止

ソフトウェアのライセンス契約ではリバースエンジニアリングを禁止する条項が設けられることが間々あります。著作権法30条の4(非享受目的利用)が改正されたことにより、著作権法上はリバースエンジニアリングの過程でプログラムを複製等することができると考えられます。このような著作権の制限規定に加えて、リバースエンジニアリングを禁止する契約条項をおくことができるのか(有効なのか)には議論がありますが、そのような条項も有効という考え方が多いようです(ウェブ上でみつかった文献として、高田寛「プログラムのリバースエンジニアリングの法的課題」企業法学研究第9巻第2号7頁(2020)(https://www.jabl.org/kigyouhougakukenkyuu2020Vo.9No.2_Takada.pdf)。

とはいえ、リバースエンジニアリングの禁止が独占禁止法に抵触するおそれはあります。「ソフトウェアと独占禁止法に関する研究会中間報告書」(公正取引委員会、平成14年)は、①ライセンスに係るソフトウェアのインターフェース情報が必要であり、②ライセンサーが当該インターフェース情報を提供しておらず、③ライセンシーにとって、リバースエンジニアリングを行うことが、当該ソフトウェア向けにソフトウェアやハードウェアを開発するために必要不可欠な手段となっているような場合においては、独占禁止法が適用され得るとしています。そして、このような場合に独占禁止法の弊害要件(公正競争阻害性)を満たせば、拘束条件付取引に該当するとしています(一般指定12項)。

上述した①~③のような場面がどの程度あるのか分かりませんし、自由競争に影響を及ぼすようなソフトウェアライセンス契約というのもあまりないのかもしれません。ただ、上記報告書は著作権法30条の4が導入される前に作られたものですから、同条の設けられた現在では、不公正な取引方法に該当しやすくなっているのではないかという指摘もあるようです(永口学=工藤良平『Q&A 独占禁止法と知的財産権の交錯と実務 基礎から応用までを理解しコンプライアンスを実現するための手引き』312頁(日本加除出版,2020年)。なかなか難しい問題のように思いますが、著作権の権利行使と当事者間の合意とに上下をつけることもないので、あまり違いはないような気もするところです。

なお、リバースエンジニアリングが禁止されない場合でも、リバースエンジニアリングにより抽出したアイデアを基に同じような(類似する)ソフトウェアを作成してしまうと、著作権侵害になるおそれがあります。著作権法30条の4は思想感情を享受しないリバースエンジニアリングの過程における利用を対象としているからです。このような問題を避けるために、いわゆるクリーンルームと呼ばれる方式がとられることがあるようです(プログラムの解析をしてアイディアを抽出する部隊と、そのアイディアを基にプログラミングする部隊とを完全に分ける方法)(中山信弘『著作権法[第4版]』396頁(有斐閣,2023年))。ただ、このような方法をとれば著作権侵害の問題を招来しないのかについては、議論があるようです。生成AIにより、たまたま類似する著作物ができてしまった場合と似たような問題かもしれません。

一覧へ戻る