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職場における電子メールなどのモニタリング

最近はほとんどの職場で電子メールやチャットツールが利用されるようになっています。従業員が電子メールなどを私的に使用することもあり得るわけですが、それを会社が監視するのはプライバシーの侵害になるのでしょうか。これには、私的使用が会社のルールに違反するのかとか、職務専念義務違反になるのかという問題もあるのですが、ここではプライバシーの侵害になるかという点から考えてみます。

一般に、会社から貸与されているパソコンであっても、私的な電子メール等についてのプライバシーの利益は認められると考えられています。ですから、会社としても好きなようにモニタリングをすることはできません。

どのような場合であればモニタリングが許容されるのか明確にな基準はありませが、「モニタリングの目的が企業運営上必要かつ合理的なものか、その手段・態様は相当か、従業員の人格や自由に対する行き過ぎた支配や拘束にならないか、従業員の側に監視を受けることも止むを得ないような具体的事情が存在するか、などの要素を総合的に考慮」して判断すると言われています(蔦大輔「機密情報持ち出し(内部不正)に関する法制度」有斐閣Onlineロージャーナル(2025年)(YOLJ-L2512003))。

要するに、プライバシー侵害かどうかは比較衡量により判断されますので、会社側と従業員側の利益のバランスをみるということでしょう。例えば、会社に営業秘密の漏洩があったときの調査であれば、許容される可能性が高くなるでしょうし、上司が気になっている女性の電子メールを盗み見るというのであれば許されることはないでしょう。また、上の基準は目的に対して手段が相当かということも問題としています。組織へのサイバー攻撃の検知のためのに、従業員のメールの本文まで確認する必要はないわけです。

では、会社側として何か準備しておくことはできるでしょうか。個人情報保護委員会は、個人データを取り扱う従業員をモニタリングする際には、 社内規程の整備と従業員への告知が必要としています。モニタリングの目的、実施体制、実施方法を記載した社内規程を整備して従業員へ告知すべきということです(個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」(令和6年12月更新)Q5-7)。

これは、個人情報の安全管理措置の一環として従業員をモニタリングすることの是非という文脈でのQ&Aですが、参考にはなります。学説でも、事前にメールの監視・調査権限が明定されていれば労働者にプライバシー保護の期待も生じず、監視・調査が可能となるとする見解が有力ということです(荒木尚志「メディア判例百選〔第2版〕」236-237頁(別冊ジュリスト241号))。先ほどの比較衡量論でいえば、従業員側のプライバシー保護の利益(期待)が小さくなるので、モニタリングが認められやすくなるということでしょう。

会社としては、万が一に備えて、事前に社内規程を設けておくとよいと思われます。場合によっては、機密情報を取り扱う従業員には個々に承諾書などを取り付けておくことも考えられます。また、目的・手段の関係が問われますので、できる限り、従業員のプライバシーの侵害とならないような方法を常日頃から検討しておくべきでしょう。

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