先日、外国産ロブスターを「伊勢海老」と表記し販売した事業者が景品表示法違反での措置命令を受けたとのことです。また、不正競争防止法違反の疑いで刑事告訴がされており、三重県警に受理されたとのことです。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/cbc/2469574?display=1
少し気になったので調べてみると、ロブスターはザリガニ類で伊勢海老(イセエビ)はイセエビ類ということで、生物学的な分類が異なっているようです。ということで、ロブスターを伊勢海老と表記するのは虚偽の表示ということになります。
当該事業者は外国産のイセエビだと思ったと述べているようです。悪徳な事業者の言い訳のようにも聞こえますが、伊勢海老(イセエビ)の表記はなかなか難しいようです。上の記事では消費者庁が「日本近海でとれる1種類しか『伊勢海老』の表記を認めていない」と書いてありますが、はっきりとした根拠がみあたりませんでした。消費者庁の「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」(平成26年3月28日)では、ロブスターをイセエビと表記することは景品表示法上問題になるとされていますが、外国産のオーストラリアミナミイセエビについては、「伊勢志摩地方の風景写真とともに、イセエビを使用している旨をメニュー等に表示」することが景品表示法上に抵触するおそれがあるとしています(Q-9、Q-10)。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/140328premiums_5.pdf
これは伊勢志摩地方の写真が当地のイセエビであると誤認させるおそれがあるからです(つまり、消費者が国内産(それも本場の)イセエビなので良いものだろうと誤認してしまう)。外国産のイセエビをイセエビとして表示してはいけないわけではないと思われます。ですから、当該事業者が本当に外国産のイセエビだと信じていたのであれば、不正競争防止法違反について故意がなかったということになりそうです(ロブスターをイセエビと信じたというのは考えにくいのですが、外国産のイセエビを伊勢海老と信じたとなると難しくなります)。
なお、農林水産省が『商品名に伊勢海老を漢字表記できるのは、加工品の場合「伊勢志摩地方で水揚げされたもののみ」で、三重県産以外の県産や外国産は「イセエビ」とカタカナ表示を指導』しているというウェブサイトもみつかったのですが(下記URL参照)、私も十分な知見がなく出店にまではたどり着けませんでした。ちなみに、農林水産省管轄の地理的表示法に関する審査要領別添3「名称審査基準」第2・1(1)アでは「伊勢えび」という名称は、普通名称化しているとみているようです。つまり、伊勢という産地でとれたものが「伊勢えび」というわけではなく、一般的に伊勢えびという表記が用いられるという意味です。
https://www.iseko.com/iseebi-k.html
このように、イセエビの表記はなかなかに難しいものです。伊勢海老の高級品としてのブランド価値を維持していきたいという思惑と、イセエビという生物学的な分類があり、一般的に通用している名前であるという事実とがぶつかり合うところなのかもしれません。お商売をするにあたっては、イセエビ(の加工品)を販売するときには原産地などをはっきり表示して消費者の誤認を防止することが重要かもしれません(なお、生鮮魚介類については食品表示法上、生産水域名を表示するのが原則とされています)。