お仕事の関係で役員会に出席したときに少し話題になったのですが、近時はAIの進歩が著しく、AIで作成したであろう問い合わせなどが散見されるということでした。当事務所でもAIを利用して作成したであろうと思われる契約書などを見かけることがあります。
弁護士の業界でもAIを利用したサービスなどが提供されているようです。ただ、このようなサービスについては、弁護士法72条で違法とされる「非弁行為」との関係が問題になります。先日の報道では、2026年8月21日に、法務省が生成AIを使った法務支援サービスについて「非弁行為」との線引きを示したガイドラインを公開したということでした。
ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について
https://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/housei10_00134.html
私もこのガイドラインを少し読んでみたのですが、あまり分かりやすいものではありません。だいたい次のような内容と思われます(言うまでもありませんが、本稿は法的なアドバイスを提供するものではありませんので、事業等に際してはご自身でご確認ください)。
①行為主体
まず、この種のAI等法務業務支援サービス(以下では単に「サービス」とします。)は、そのサービスの利用者(ユーザー)が利用するものです。そうすると、サービス提供者が非弁行為と言われる行為の主体になるのかという問題があります。利用者が使っているのだから、利用者の問題ではないかとも思えるのですが、利用者のサービスへのプロンプト入力はサービス提供のきっかけに過ぎないと考えることもできるとされています。つまり、プロンプトの入力によってサービス提供者が当然に想定している法務業務支援が行われるのであれば、サービス提供者が行為主体と評価される場合もある、ということです。
②事件性のある案件
もっとも、法務業務支援サービスの全てが弁護士法72条で禁止されている非弁行為に該当するわけではありません。弁護士法72条には次のように書かれています。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
これをどのように解釈するのかは議論があるのですが、ガイドラインでは事件性の要件と解釈しています。つまり、上の「訴訟事件…不服申立事件」やそれらに準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するなど、法的紛議が生じることがほぼ不可避に想定され得る案件と考えるべきとしています。
③価値中立的なサービス提供
①と②から、「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用させることを目指して設計されたサービスについては、サービス提供者が非弁行為の主体となるおそれがあります。簡単に言えば、裁判所に提出するための訴状、準備書面作成サービスのようなものでしょうか。
これに対して、そのような「事件性」のある案件のみを対象するものではないサービスは、「価値中立的なサービス提供」であって、非弁行為の責任を追及するのは難しいとしています。このようなサービスは事件性のある案件にも使うことができるのかもしれませんが、それにはサービス利用者の判断が入るからです。ですから、サービス提供者の責任とは言いにくいのです(有名なウィニー事件(最三小決平成23年12月19日(刑集65巻9号1380頁)を参照しています)。
④不適切利用の回避措置
もっとも、価値中立的なサービスの提供であればどのような使い方をされても問題なしというわけではありません。ガイドラインでは、『サービス利用者のうち例外的とはいえない範囲の者が同サービスを「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用する蓋然性が高いと認められる状況下において、サービス提供者もそのことを認識・認容しながらサービスを提供し、実際に当該サービスが「事件性」のある案件に関する「鑑定…その他の法律事務」に利用されていると認められるとき』には、サービス提供者の責任が問われうるとしています。この場合には、①で述べたように、サービス利用者の行為は単なる契機に過ぎないということになるからです。ですから、サービス提供者としては、サービス利用者の利用の仕方によってサービスの利用を停止したり、警告の発出や弁護士への相談の案内などとる仕組みを設けておく必要があるということになります。価値中立的なサービスであることに加えて、仕組みや体制の整備が必要になるということです。
なお、この場合には、サービス提供者が非弁行為の行為主体であり正犯となるように読み取れますが、前述のウィニー事件のように幇助犯と判断される場合もありそうです。
いずれにしても、インターネットやAI技術の進歩により、どのような場合にウェブ上のサービス提供者がその行為の主体と評価されるのか、あるいは幇助となるのかという難しい問題のあらわれた一場面だと思います。引き続き、リーガルテックの動向には注目していきたいところです。