(1) この夏の映画は、アニメ映画が好調だったようです。アニメ映画は見ていませんが、先日、私も近くの映画館に行ってきました。ところで、映画を見に行くと冒頭に「NO MORE 映画泥棒」のマナームービーが流れます。マナームービーのおかげか、映画館で映画を録画してはいけないのは当たり前のような気もしてしまいますが、映画の盗撮については「映画の盗撮の防止に関する法律」という法律があるのです。
(2) 映画は著作物ですので盗撮は著作権法で禁止すればよいのではないかと思うかもしれません。ただ、著作権法には、私的使用を目的とするときは、例外的に著作権者の許諾なく著作物の複製(録画など)ができるという制限規定があります。仮に著作権法だけだと、映画館で映画を録画している人がいたとしても、その人が自宅に帰って一人で見るためだ(私的使用の目的)などと言い張れば、著作権侵害とすることは難しいのです。もしかしたら、その人の言っていることは嘘であって、そのあとでインターネット上に録画データをアップロードするのかもしれません。このような場合にも著作権侵害として対応ができるようにして、海賊版の流通防止を効果的に行おうとするのが、「映画の盗撮の防止に関する法律」です。
(3)この法律によりどうなるのかというと、 映画の盗撮については、著作権法の私的使用目的の複製の例外規定が適用されなくなります。また、映画の盗撮により著作権を侵害した者は、私的使用目的で行った場合であっても、罰則の対象となります(著作権法では私的使用目的での複製については原則として刑事罰の適用対象となっていません)。このようにすることで、自宅で一人で見るために録画していると言った言い訳ができなくなるわけです。
(4)ところで、この法律では「映画の盗撮」行為を対象としています。「映画の盗撮」とは、映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われる映画を許諾なしに録画ないし録音をすることです。なお、試写会のように有料での上映に先立って無料で上映が行われる映画についても、録音又は録画すれば「映画の盗撮」に当たります。
(5) ちなみに、録画は影像を連続して物に固定することですから、写真を一枚撮影するのであれば映画の盗撮にはなりませんが、やめておいた方がよいでしょう。また、盗撮の規定は、日本国内における最初の有料上映後8月を経過した映画については適用されないことになっています。ですから、再上映のときには録画しても盗撮にならない可能性がありますが、これもやめておいた方がよいでしょう。いずれも、私的使用目的でないのなら著作権侵害になりますし、映画館の利用規約にも反することになると思います。
(6)「映画の盗撮の防止に関する法律」は平成19年8月30日に施行された法律です。比較的新しい法律なので驚きましたが、それまでは、ビデオカメラなどを持ち込んで撮影するのは難しかったでしょうし、インターネットにアップロードしたり、DVDに複製して譲渡したりすることは考えにくかったのでしょう。現在では、デジタル技術の進歩によってスマートフォンで簡単に撮影できてしまいますので、時代の変化を感じます。最近ではAIを代表とする技術の進歩に伴ってさまざまな法律問題が顕在化していますが、映画の盗撮問題はその先駆け的なものだったのかもしれません。