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インターネット通販の表示義務事項と取消権

1. はじめに

インターネット通販をしたときやサブスクリプション契約をした後で「しまった」と思ったことはありませんか。実は私も間違えて年間契約を締結してしまったことがあります。インターネット上での取引については紛らわしいものが多く、いわゆる「ダークパターン」を用いた詐欺的な定期購入商法が問題とされてきました。その対策として、令和3年の特定商取引法改正があり、一定の場合には誤認による申込みの取消しが可能となっています。

2. 表示義務と取消権の発生

特定商取引法第12条の6第1項によれば、インターネット通販などでは事業者は、申込みの手続きを表示する画面に所定の事項を表示しなければならないことになっています(表示義務事項)(特定商取引法第12条の6第1項各号)(以下、特定商取引法の表記は省略します)。この表示義務事項について、事業者が不実の表示をしたり、誤解を招く表示をしたことで、消費者が誤認して契約の申込みをした場合には取消権が発生します(第15条の4第1項各号)。各号の簡単な内容及び具体例は以下の通りです。

表示義務(第12条の6第1項)に違反
第15条の4第1項第1号(後記項目3)
不実表示
事実と異なる表示
例 規約上は解約不可なのに、最終確認画面では「いつでも解約できる」
第15条の4第1項第2号(後記項目4)
不表示
表示すべき事項を表示しない
例 定期購入が条件なのに、その表示がない
誤認させる表示の禁止(第12条の6第2項)に違反
第15条の4第1項第3号(後記項目5)
申込み成否の誤認
申込みにならないと誤認させる表示
例 無料サンプルの申込みを装い、実は定期購入
第15条の4第1項第4号(後記項目6)
重要事項の誤認
事実であっても誤解を招く表示
例 初回価格を強調し、2回目以降の条件は小さな文字
消費者が誤認して申込み ▶ 申込みの意思表示を取り消せる
図 誤認申込みの取消しが認められる四つの類型(第15条の4第1項)

3. 不実表示(第15条の4第1項第1号・第12条の6第1項違反)

商品分量、販売価格、解除条件などの表示義務事項について事実と異なる表示がされており、消費者がその表示を事実であると信じて(誤信して)契約の申し込みをしたときには、その申込みの意思表示を取り消すことができます(15条の4第1項1号)。例えば、利用規約上は解約できないのに、最終確認画面ではいつでも解約できるように記載されていて、それを信じて申し込みをしてしまったような場合です。

ただし、注意しなければならないのは、申し込み手続きのための表示とは無関係な場面で事実と異なることが告げられたような場合には、この規定に該当しないことです。例えば、SNSのDMで途中で解約もできるから、と言われて契約しても本号での取消しは認められません(ただし、別に消費者契約法や民法(詐欺)により取消が認められる可能性はあります)。

4. 不表示(第15条の4第1項第2号・第12条の6第1項違反)

最終確認画面に表示しなければならない事項(表示義務事項)を表示していなかったために、消費者が誤解してしまった場合にも取消権が発生します(15条の4第1項2号)。具体的には、定期購入が条件であるにもかかわらず、そのことが全く表示されていなかったので、1回限りの契約だと誤解してしまったような場合です。

なお、意図的な不表示でなくて、業務上のミスで表示をしていなかった場合にも取消しが認められます。特に悪意のない事業者においても注意が必要な事柄です。

5. 申込み成否の誤認(第15条の4第1項第3号・第12条の6第2項第1号)

これは情報の送信等が契約の申込みにならないように誤認させる表示があった場合です。その表示が原因となり消費者が契約の申し込みでないと誤認して(購入)ボタンをクリックしてしまったような場合には、それを取り消すことができます(15条の4第1項3号)。

例えば、無料サンプルや試供品の申込みであるかのように装い、実際には定期購入の申込みをさせるものだったというケースです。

6. 重要事項の誤認(第15条の4第1項第4号・第12条の6第2項第2号)

事業者の表示義務事項について、誤認させるような表示があった場合です。先ほど説明した不実表示(第15条の4第1項第1号)は事実と異なる表示ですが、この規定は事実であったとしても誤解をさせるような表示になっていれば適用されます。ですから、現実にはこの規定に該当するケースが多そうです。

例えば、インターネット通販の最終確認画面で、1回分の販売価格や分量を強調して記載し、2回目以降の販売価格やその他表示すべき詳細な条件については小さな文字で表示してあったため、「1回限りの契約である」と認識したような場合です。

7. 特に注意をしたい表示義務事項

なお、事業者側の表示義務事項にはいろいろなものがありますが、特に大事なのは次の二つでしょう。

①分量(第12条の6第1項第1号)

まず、商品やサービスの数量や回数などです。消費者庁は、サブスクリプションの場合には、役務の提供期間を表示し、その期間内に利用可能な回数が定められているときには、その内容を表示することが必要としています。

②契約の申込みの撤回または解除に関する事項(同項2号、第11条第5号)

それから、契約の申込みの撤回や解除に関する事項です。例えば、定期購入契約で、解約の申出期限がある場合にはその期限を書かなければなりません。また、解約時に違約金が発生するのであれば、違約金が発生することとその金額を書かなければなりません。

このほかにも、表示義務事項はありますので、確認をしてみてください。

8. まとめ

このように、「インターネット通販で勝手に定期購入になっていた」というような場合に、法的に対応できる可能性はあります。とはいえ、その証拠がない場合が多いようです。この種の紛らわしい表示は一瞬だけ表示されて消えてしまうような場合が多々あります。気になったらその都度スクリーンショットを撮影しておくべきでしょう。また、インターネット通販では相手方が特定できないような場合もたくさんあると思われます。例えば、海外の事業者であれば法的には間違いがなくても金銭の返還などを求めるのは困難なことは想像に難くありません。慎重にショッピングなどをすることが最大の自衛策と思われます。なお、消費生活センターの電話番号は188ですので、気になったときには相談してみてください。

参考文献
圓山茂夫 著『詳解 特定商取引法の理論と実務〔第5版〕』(民事法研究会、2024年)387頁
阿部高明 著『逐条解説 特定商取引法 第Ⅰ巻』(青林書院、2022年)265頁
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